「歴史でわかる科学入門」の「第14章 知識は力なりーベーコンとデカルト」まとめ

科学そのものについて特に深く考察した二人の人物、ベーコンとデカルトについて。
「第14章 知識は力なりーベーコンとデカルト」の要約
1. フランシス・ベーコン(1561-1626) イングランドの法律家・政治家
・父のニコラスは低い身分から身を起こし、女王エリザベス1世の時代に有力な官僚として出世した。息子のフランシスはケンブリッジ大学に入り、エリザベス1世と次の王ジェイムズ1世に仕えた。
・フランシスは法律の専門家で、当時の法曹界の重要人物であり、国会議員としても積極的に活動した。それだけではなく科学にも情熱を持っていた。化学の実験を行い、自然界のあらゆる事柄を観察することに時間をかけた。
・彼の一番の業績は、科学の価値と方法について、的確で説得力のある主張を見出したこと。「知識は力なり」と述べ、その知識を獲得する最良の方法が科学であると考えた。
。公費を投じて研究所を設立し、科学者が研究できる場を提供するようエリザベス1世とジェイムズ1世に働きかけた。また、科学者同士の情報交換の場として学会や協会を結成するべきだと考えた。
・科学を発展させる最良の方法について書き残した。研究者は自分の研究結果に確証を得られるよう、実験と観察を繰り返すことが何より大切である(すなわち帰納法)と。事実の積み重ねによって一般化を行い、それによって自然の働きを司る普遍的な法則が明らかになるからである。
2. ルネ・デカルト(1596-1650) フランスの哲学者
・子供の頃から賢く、学生時代に望遠鏡を使ったガリレオの発見やコペルニクスの地動説、最新の数学を学んだ。
・大学では法学を修めて卒業すると、軍隊に志願した。ほぼ9年の間、カトリックとプロテスタントのどちらの軍にも身を置いた。
・従軍して間もない頃、彼はふたつの結論に達した。一つ目は、ほんとうの知識を得ようとするならすべて自分自身でおこなわなければならないということ。「われ思う、ゆえにわれあり」。
・二つ目は、宇宙が「物質」と「精神」という、まったく異なる2種類の実体で構成されているということ(「二元論」)。科学が対象として扱うのは物質であると考えた。
・代数の問題で既知の数にa, b, c を使い、未知の数に x, y, z を使うというアイデアを思いついた。
第14章まとめと感想
・ベーコンとデカルトは、ともに科学に気高い理想を抱いていた。ベーコンの理想は、国家が資金を提供し、みなで共有しあって取り組むこと、一方、デカルトは独力での問題解明を好んだ。
・しかし、ふたりとも自分のアイデアを誰かが受け継いでさらに発展させることを願っていた。また、科学は人類を幸福にする力のある、特別な価値のあるものであるという信念も共通していた。
*感想
・ベーコンとデカルトは、科学に関する先人たちの研究や、自分自身での研究をふまえ、さらにその先にまで自分の考察を深めた。
言いかえると、科学的な研究に終始するのではなく、人類にとって科学とは何か、科学の研究に取り組む姿勢はどうあるべきかということにまで思いをめぐらせた。科学というジャンルの外側から科学をとらえようとした。
・おそらくこの二人の頃から、科学と哲学の目指すゴールの違いが明確になり、それぞれ異なるジャンルの学問として発展していくのだろうと思った。
参考文献 「歴史でわかる科学入門」(ウィリアム・F・バイナム著 藤井美佐子訳 太田出版)