「歴史でわかる科学入門」の「第10章 人体の解明」まとめ
時代はすでにルネサンスも佳境に入り、解剖学の教祖のような存在、ヴェサリウスが登場。
「第10章 人体の解明」の要約
人体の解剖が行われるようになったのは1300年前後。大学の医学部で解剖学が教えられるようになったから。
1.ヴェサリウス(1514-64)について
・人体の解剖に最初に取り組んだ人物。解剖学者にして外科医だった。父は薬剤師。
・学業優秀だった彼は、ルーヴァン大学、パリ大学を経て、1537年、当時世界最高の医学部があったパドヴァ大学に行き、試験に合格した翌日に外科学と解剖学の講師に抜擢された。
・彼は自ら執刀しながら解剖学を教え、翌年には見事な人体解剖図を発表した。その後も生涯を通じて解剖に情熱を注いだ。
・1543年に解剖学の名著「人体の構造について(ファブリカ)」を出版した。その中の解剖図は、細部にわたって正確であるだけではなく、腕の立つ画家の協力を得て芸術的に美しく描かれた。
・ヴェサリウスは、「ファブリカ」の中で、ガレノスの数多くの誤りを指摘し、正した。ただし、呼吸や消化などの働き(生理機能)を観察することはできなかった。
・「ファブリカ」初版を出版した直後に宮廷の侍医となり、その後は金持ちや有力者の診療に明け暮れた。
第10章まとめと感想
・ヴェサリウスが著した解剖学の書「ファブリカ」は、解剖学と芸術と印刷技術が融合された人類史上有数の傑作である。
・ヴェサリウスは自らの手で解剖を行い、観察することにより、古代の偉大なる医者ガレノスの説に意を唱えた。後世の医師は、彼が発表した図を参考にすることができただけではなく、自らの手で調べ、自らの頭で考えるという手法を見習うようになった。
・ちなみにルネサンスは、医者だけではなく画家たちも人体解剖するようになった時代(ダ・ヴィンチやミケランジェロなどが有名)。
*感想
・ヴェサリウスの登場により、医学、その中でも特に解剖学というジャンルが真に科学的な学問の一分野として発展していくようになる。しかもその書物が芸術家によって装飾されるのが科学と絵画の融合を試みているようで、ルネサンスという時代はとても興味深く面白い。
・ちなみに、わたしは「解剖学のはじまりと発展を絵画で読み解く」という講座をオンラインで開催している。主題となる絵画はレンブラントの出世作だが、話の中にはガレノスやヴェサリウス、ダ・ヴィンチも登場する。
参考文献 「歴史でわかる科学入門」(ウィリアム・F・バイナム著 藤井美佐子訳 太田出版)