ターナー「雨、蒸気、速度―グレート・ウェスタン鉄道」と蒸気機関(1)

今回取り上げる作品は、19世紀に活躍したイギリスの画家ターナーの「雨、蒸気、速度―グレート・ウェスタン鉄道」です。

この作品が描かれたのは1844年。

画面右手前、こちらに向かって走ってくる黒い蒸気機関車が見えます。

この蒸気機関車はいつ頃、どのようにして作られたのでしょうか。

まずは蒸気機関車の動力である蒸気機関の歴史からたどってみます。

蒸気機関とは

蒸気機関とは、水蒸気を利用して物を動かす仕組みのことです。

ここでまずご紹介したいのがジェームズ・ワット(1736-1819)です。

ブレダ「ジェームズ・ワットの肖像」1792年

世界史の教科書では「蒸気機関といえばワット」というぐらい、なじみ深い人ですね。

彼は子供の頃、やかんに水を入れて火にかけ沸騰させるとふたが持ち上がるのを見て、蒸気機関を思いついたと言われています。

これは有名な話ですが、蒸気機関を発明したのは実はワットではありませんでした。

蒸気機関の歴史

紀元前1世紀頃にはすでに「アイオロスの球」と呼ばれる蒸気を利用した装置が記録されています。

図のように、蒸気を噴射しながら回転するタービン型の装置です。

(ヘロンの蒸気機関もどきの実験レポートはこちら

また、16世紀ごろのオスマン帝国やイタリアにも蒸気タービンが考案されていました。

18世紀になる頃、イギリスでは石炭の需要が増大し、炭鉱の地下水を汲みあげる装置が必要となります。

1705年、企業家トーマス・ニューコメンが最初の実用的な蒸気機関を開発しました。

大まかに言うと、ボイラーAで作り出された水蒸気をBに送り込み、その後冷却して水に戻すということを繰り返すことで、ピストンDが上下運動し続けるというシステムです。

一つのシリンダを高温に熱しては冷却するということを繰り返すので、非常に効率の悪いものでしたが、100以上の鉱山や炭鉱で使われ、ニューコメンは商業的に成功しました。

ワットと蒸気機関との出会い

1760年、ニューコメンの蒸気機関の模型の修理の依頼がワットのところにやってきました。

その模型はスコットランドのグラスゴー大学のもので、彼はこの大学で製図機械工として働いていました。

職人気質で完璧主義の彼は、その模型を見て、もっと改良できるはずだと考え、自発的に研究を始めました。

ある日、公園を散歩していた彼は、閃きました。

「ピストンを押し上げた後の蒸気を別の容器に移してそこで冷やせば良い」と。

冷却専用の容器(復水器)を付け足すことで、シリンダは常に熱いままで保つことができ、熱効率が大幅に改善されます。

1769年には特許を取得し、ワット機関の製造を開始し、完成させました。

その後も彼は改良を重ね、当初は単なる揚水ポンプだった蒸気機関が、工場機械の動力源として、従来の水力や畜力などに取って代わるほど普及していきました。

さらに、交通もこの蒸気機関によって大きく変わります。

ワットが自らの探究心から改良した蒸気機関は、イギリスの産業革命だけではなく、世界の経済の発展に多大な影響を与えたのです。

次回は蒸気機関車の登場から始まります

※掲載の図は全てWikipediaより引用しました。

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