大塚国際美術館でホルバイン「大使たち」のトリックアートを鑑賞
原寸大の陶板名画で有名な大塚国際美術館に行ってきました。
(館内のレストランで「最後の晩餐」をいただいた時の記事はこちら)
日本では見ることのできない世界の名画が一堂に集められていて圧巻です。
また、名画そのものだけではなくて、名画が置かれていた場所も完全再現されているのが見どころです。
例えばミケランジェロが描いたシスティーナ礼拝堂の天井画と壁画。
筋肉美の肉体に上から横から囲まれて圧倒されます。
ジョットのフレスコ画で有名なスクロヴェーニ礼拝堂。
金色の星が散りばめられた紺碧の空が美しい。
オランジュリー美術館のモネの睡蓮も再現されています。
その他、どこを見ても目移りするほどにあれも!これも!有名な作品がびっしりと展示されています。
その中で、今日、私が特にご紹介したいのがこちら。
ホルバインの「大使たち」です。
1533年に描かれ、現在はロンドンのナショナル・ギャラリー所蔵です。
作者のハンス・ホルバインはルネサンス期のドイツの画家ですが、イングランドに渡って、国王ヘンリー8世の宮廷画家になりました。
ヘンリ−8世は離婚して後にエリザベス女王の母となるアン・ブーリンと再婚し、反対するローマ・カトリック教会から独立して英国国教会を成立させたことで有名です。
ヘンリ−8世のこの動きに対して、フランス国王フランソワ1世がイングランドに派遣した大使たちがこの絵に描かれた二人です。
二人の大使たちの間に描かれた様々な小物が当時のヨーロッパの情勢などを暗示しているといわれていますが、一番下にある、斜めの物体を見てみてください。
正面から見たら何かわかりませんよね?
でも、絵の右端まで移動して、右横から絵を眺めると、こんなものが見えるのです。
そう、「ドクロ」です!この角度から見て初めてわかるんです!まさに16世紀のトリックアートです。
当時のヨーロッパの静物画には、「死を忘れるな」という意味でドクロが描かれることはよくありましたが、このように、横から見ないとわからないように描くのは、発想も技術も人並み外れた凄さがあります。
この、横から見て初めてわかるドクロは本の挿絵やスライドの画像では確認できないものなので、大塚国際美術館に行かれた時にはぜひ、肉眼で見て、驚きと素晴らしさを確かめていただきたいと思います。
わさびラボ 小林 佳子